川崎重工業は2026年7月2日の取締役会において、海外募集による新株式の発行と、2031年満期および2033年満期のユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(トランジションCB)の発行を決議した。新株式発行による手取り概算額は約927億円、転換社債2本の発行による調達額は合計約1,010億円で、合わせておよそ1,937億円規模の資金調達となる。
新株式で得た約927億円は2029年3月末までに設備投資へ充当する計画だ。具体的には、岐阜・名古屋・西神・明石の各工場における民間航空機および航空エンジン事業の増産対応、明石工場でのガスタービン生産能力拡大、西神戸工場でのロボット関連事業の増産投資、坂出工場での液化水素運搬船やLPG・アンモニア運搬船など次世代エネルギー運搬船の建造体制強化が含まれる。一方、転換社債による約1,010億円は2031年3月末までに、液化水素サプライチェーンの構築とフィジカルAIの実装に向けて配分される。内訳は子会社・日本水素エネルギーへの投融資を中心とした液化水素関連に約705億円、フィジカルAIの研究開発やアライアンス拡大、既存借入返済等に約305億円を充てる方針だ。
背景には、2025年度に売上収益・事業利益ともに過去最高を更新した好業績がある。今後は「防衛・防災」「エネルギー」「半導体」「ヘルスケア」「航空・宇宙」を重点領域と位置づけ、水素関連技術・フィジカルAI・ロボティクスを戦略軸として投資を拡大する方針を掲げる。液化水素サプライチェーン構築事業は総額約3,000億円規模で、うち約2,200億円がNEDOのグリーンイノベーション基金から補助される見通しだ。
調達手法として新株式と転換社債を組み合わせたのは、財務体質の強化と一株当たり利益の希薄化抑制、調達コスト抑制を同時に図るためとしている。株式・社債ともに国内募集は行われず、海外投資家を対象とした募集となる。今後は各工場への設備投資の進捗や、液化水素基地「川崎LH2ターミナル」の建設状況が資金活用の具体的な進展を測る指標となる。