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食品・飲料

内需の成熟と海外展開 —— 「たばこ」が最大の稼ぎ頭という日本の特殊事情

食品・飲料は人口減で国内市場が成熟し、各社は海外展開と高付加価値化で成長を探る。 日本で売上規模が突出するのは JT(日本たばこ産業)で、たばこ事業が売上の大半を占める特殊な存在。 味の素は調味料からアミノ酸技術を活かした電子材料(半導体向け ABF)まで広げ、キリンは酒類からヘルスサイエンスへ、 キッコーマンは醤油の海外展開で稼ぐなど、各社の「逃げ道」が分かれている。下表は各社の全社連結。

各社の全社連結(横断比較)

数値は各社の最新の全社連結(有報ベース)で、当該業界の事業“単独”ではない。 決算期は会社ごとに異なる(最新を含む期: 2026年3月期 前後)。

セグメント別(主戦場/非主戦場)

各社の事業別セグメント売上・利益。この業界の主戦場に当たるセグメントには主戦場を付けています。主戦場が見当たらない会社は、その事業が独立セグメントとして開示されていない(=全社の一部に埋もれている)ことを意味します。

日本たばこ産業株式会社主戦場側

セグメント(事業別)売上高営業利益設備投資減価償却セグメント間取引構成比
たばこ主戦場3.31兆円9522億円1432億円1797億円100万円95.4%
加工食品1595億円86億円74億円74億円3500万円4.6%
セグメント別の売上高など、有報のセグメント情報注記から抽出(事業別)。構成比は売上高に占める各セグメントの割合(セグメント間取引・調整前)。会計基準やタグ付けにより取得できる科目は会社ごとに異なります。

たばこが売上の大半(3兆3,054億円)を占める。加工食品は小さい。元国営企業で政府が株式を保有。

キリンホールディングス株式会社主戦場側

セグメント(事業別)売上高営業利益資産設備投資減価償却セグメント間取引構成比
酒類主戦場1.08兆円1354億円1.43兆円486億円325億円21億円44.8%
清涼飲料5782億円677億円3647億円182億円137億円33億円24.1%
医薬品4965億円1023億円1.06兆円455億円261億円3億円20.7%
ヘルスサイエンス2514億円111億円7641億円109億円152億円47億円10.5%
セグメント別の売上高など、有報のセグメント情報注記から抽出(事業別)。構成比は売上高に占める各セグメントの割合(セグメント間取引・調整前)。会計基準やタグ付けにより取得できる科目は会社ごとに異なります。

酒類(キリンビール)が主力。清涼飲料に加え、協和キリン(医薬)とヘルスサイエンスを持つ。

味の素株式会社主戦場側

セグメント(事業別)売上高営業利益資産設備投資減価償却セグメント間取引構成比
調味料・食品主戦場9369億円1430億円7252億円585億円421億円91億円59.7%
ヘルスケア他3415億円662億円4807億円278億円242億円61億円21.8%
冷凍食品2903億円85億円2171億円107億円145億円7億円18.5%
セグメント別の売上高など、有報のセグメント情報注記から抽出(事業別)。構成比は売上高に占める各セグメントの割合(セグメント間取引・調整前)。会計基準やタグ付けにより取得できる科目は会社ごとに異なります。

調味料(味の素)が主力。アミノ酸技術から半導体向け絶縁材(ABF)まで広げた。

明治ホールディングス株式会社主戦場側

この会社は当該期の収録データに事業別セグメントの売上・利益が含まれていません。

明治乳業と明治製菓の統合会社。食品(乳製品・菓子)と医薬品を持つ。

キッコーマン株式会社主戦場側

セグメント(事業別)売上高営業利益設備投資減価償却セグメント間取引構成比
海外食品卸主戦場4328億円307億円161億円79億円1億円58.1%
国内食品(製造・販売)1557億円99億円102億円92億円44億円20.9%
海外食品(製造・販売)1495億円409億円407億円62億円240億円20.1%
国内その他75億円16億円14億円14億円142億円1.0%
セグメント別の売上高など、有報のセグメント情報注記から抽出(事業別)。構成比は売上高に占める各セグメントの割合(セグメント間取引・調整前)。会計基準やタグ付けにより取得できる科目は会社ごとに異なります。

醤油の会社だが、売上最大は「海外食品卸」=北米での日本食材卸売。海外比率が高い。

世界の状況

日本の上場企業だけでは業界の全体像は見えない。世界の主要プレイヤーを並べると、 この業界で日本勢がどの位置にいるのかが分かる。棒の長さは規模(売上・総資産・台数など)の目安。

① 世界の食品・飲料大手 売上(直近通期)

世界の食品・飲料は欧米の巨大企業が並ぶ。日本勢は円建てで 1〜2 兆円規模で、桁がひとつ違う。

#プレイヤー売上(原文値)定義・期間
1PepsiCo(米)
$93,925M
暦年2025・Net Revenue
2Nestlé(スイス)
CHF 89,490M
暦年2025・Sales(−2.0%)
3AB InBev(ベルギー)
$59,320M
暦年2025・物品税控除後
4Unilever(英・全社)
€50,503M
暦年2025・継続事業(Foods 部門は €12,929M)
5Coca-Cola(米)
$47,941M
暦年2025・Net Operating Revenues
6Danone(仏)
€27,283M
暦年2025・Sales
7キリンホールディングス日本
¥2兆1,547億
暦年2025・酒税抜き(酒税込みは 2兆4,334億円)
8味の素日本
¥1兆5,837億
2026年3月期
各社公式決算の原文値。通貨が異なり、各社の決算資料に比較用の統一換算レートの開示がないため、これは厳密な「順位」ではない。 キリンは他社と定義を揃えるため酒税抜き(同社開示値)を採用した。味の素のみ 2026 年 3 月期で他社と 1 四半期ずれる。 ユニリーバはアイスクリーム事業の分離後の継続事業ベースで、「食品会社」として比べるなら Foods 部門の €12,929M が対応する。 AB InBev の Revenue は物品税控除後。各社は自社の世界順位を開示していないため、本ページでは順位を断定しない。 出典: 各社公式決算(プレスリリース/SEC 提出/決算短信)

② 世界のたばこ大手 売上(物品税控除後で統一)—— JT の位置

日本の食品・飲料で売上が突出するのは JT。たばこは物品税の扱いで数値が倍近く変わるため、 ここでは「物品税を控除した後」で定義を統一している。

#プレイヤー売上(物品税控除後・原文値)定義・期間
1Philip Morris International(米)
$40,648M
暦年2025・Net Revenues(物品税控除後)
2日本たばこ産業(JT)日本
¥3兆4,677億
暦年2025・たばこ税控除後/継続事業
3British American Tobacco(英)
£25,610M
暦年2025・duty/excise 控除後
4Altria(米)
$20,139M
暦年2025・Revenues net of excise taxes
5Imperial Brands(英)
£8,316M
2025年9月期・たばこ+NGP net revenue
★ 定義の統一が重要 —— たばこは物品税の扱いで数値が倍近く変わる。本表は物品税(excise/duty)控除後で統一した。 Altria は同社が開示する「Revenues net of excise taxes($20,139M)」を採用している。同社が「Net revenues」と呼ぶ $23,279M は物品税を含む別定義であり、これを他社の net revenue と並べると Altria が過大に見えるため採用しない。 JT の売上収益は有価証券報告書で「たばこ税…は収益より控除」と明記されており、他社と同一定義で並べられる(医薬を非継続事業に分類した後の継続事業ベース)。 通貨が異なり統一換算レートの一次開示がないため、これは厳密な順位ではない。 また JT を「世界3位」と呼ぶ場合は「上場たばこ企業のうち」という限定が必要(販売数量で世界最大とされる中国煙草総公司は非上場で、本比較に含まれない)。 インペリアル・ブランズのみ 9 月期。 出典: 各社公式決算(SEC 提出/Annual Report/決算短信)

業界の変遷(年表)

いまの勢力図がどう出来上がったのか。主要な出来事を時系列で並べる。各行の「出典」は発表元の一次資料へのリンク。

  1. 1985-04

    日本専売公社の一切の権利義務を承継して日本たばこ産業(JT)が設立され、たばこの国営専売事業が民営化された(日本たばこ産業株式会社法に基づく)。日本のたばこ市場が海外メーカーに開放された。

    出典: JT 公式「JT グループの歴史」/有価証券報告書
  2. 1999

    JT が米 RJR ナビスコから米国外のたばこ事業を取得し、海外たばこ事業へ本格進出した。

    出典: JT 公式「JT グループの歴史」
  3. 1999

    味の素が世界で初めてビルドアップ基板用層間絶縁材料「ABF(味の素ビルドアップフィルム)」を開発。以後 20 年以上、半導体パッケージのデファクトスタンダードとして大手半導体メーカーに採用され続けている。

    出典: 味の素 事業説明会「ICT 領域 〜ABF を軸にした成長戦略〜」(2023-06-13)
  4. 2007-04

    JT が英ギャラハーの発行済株式を取得し完全子会社化。海外たばこ事業が一段と拡大した。

    出典: JT 有価証券報告書(第23期)/公式「JT グループの歴史」
  5. 2007

    キリンが協和発酵工業に資本参加。翌 2008 年に協和発酵工業とキリンファーマが合併して協和発酵キリン(現・協和キリン)が発足し、医薬が柱に加わった。

    出典: キリンホールディングス 公式「沿革」
  6. 2009

    明治製菓と明治乳業が共同持株会社「明治ホールディングス」を設立して経営統合(2011 年の事業会社再編で薬品事業は Meiji Seika ファルマへ)。

    出典: Meiji Seika ファルマ 公式「沿革」
  7. 2010-02

    キリンとサントリーの経営統合交渉が終了し破談。実現していれば世界有数の食品・飲料グループが誕生していた。

    出典: キリンホールディングス ニュースリリース(2010-02-08)
  8. 2026-03期

    キッコーマンの連結売上収益 7,455 億円のうち、海外食料品卸売が 4,329 億円・海外食料品製造販売が 1,735 億円。醤油メーカーでありながら、収益の柱は北米での日本食材の卸売になっている。

    出典: キッコーマン 2026年3月期 決算短信

よくある質問

食品・飲料業界の主な上場企業はどこですか?

食品・飲料業界の主な上場企業には、日本たばこ産業株式会社、キリンホールディングス株式会社、味の素株式会社、明治ホールディングス株式会社、キッコーマン株式会社があります(日本国内の上場企業ベース)。

食品・飲料業界の世界の主要プレイヤーはどこですか?

① 世界の食品・飲料大手 売上(直近通期)によると、PepsiCo(米)($93,925M)、Nestlé(スイス)(CHF 89,490M)、AB InBev(ベルギー)($59,320M)、Unilever(英・全社)(€50,503M)、Coca-Cola(米)($47,941M)が挙げられます。