保険
国内は成熟、稼ぎは海外へ —— 損保3メガの海外M&A競争
保険は国内市場が人口減で成熟し、大手損保は海外保険会社の買収で成長を買ってきた。 SOMPO は海外保険が国内損保に匹敵する規模に達し、MS&AD も海外が最大セグメント。 生保では第一生命が海外保険を伸ばす。自然災害の多発が収支を圧迫する一方、金利上昇は資産運用の追い風になる。 ※ 保険会社は「売上高」ではなく「経常収益(保険料等収入)」で規模を見る。下表は各社の全社連結。
各社の全社連結(横断比較)
セグメント別(主戦場/非主戦場)
各社の事業別セグメント売上・利益。この業界の主戦場に当たるセグメントには主戦場を付けています。主戦場が見当たらない会社は、その事業が独立セグメントとして開示されていない(=全社の一部に埋もれている)ことを意味します。
東京海上ホールディングス株式会社主戦場側
| セグメント(事業別) | 設備投資 | 減価償却 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| Japan PCBusiness | 1099億円 | 769億円 | 62.1% |
| International Business | 491億円 | 821億円 | 27.7% |
| Japan Life Business | 179億円 | 102億円 | 10.1% |
| Solution And Other Business | — | 74億円 | — |
損保最大手。海外保険(米デルファイ・HCC 等の買収)で成長し、海外利益比率が高い。
MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社主戦場側
| セグメント(事業別) | 売上高 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|
| 海外子会社・関連会社主戦場 | 2.46兆円 | 181億円 | 53億円 | 40.1% |
| 三井住友海上 | 1.89兆円 | 370億円 | 466億円 | 30.8% |
| あいおいニッセイ同和損保 | 1.38兆円 | 251億円 | 614億円 | 22.5% |
| 三井住友海上あいおい生命 | 2563億円 | 110億円 | — | 4.2% |
| 三井住友海上プライマリー生命 | 1067億円 | 53億円 | — | 1.7% |
| 三井ダイレクト損保 | 403億円 | 20億円 | — | 0.7% |
三井住友海上とあいおいニッセイ同和の持株会社。海外子会社が最大セグメント。
SOMPOホールディングス株式会社主戦場側
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 資産 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 国内損害保険主戦場 | 2.69兆円 | 2681億円 | 6.44兆円 | 339億円 | 568億円 | 451億円 | 48.3% |
| 海外保険主戦場 | 2.43兆円 | 2945億円 | 8.16兆円 | 300億円 | 202億円 | 124億円 | 43.7% |
| 国内生命保険 | 2587億円 | 686億円 | 3.03兆円 | 20億円 | 22億円 | — | 4.7% |
| 介護 | 1862億円 | 80億円 | 4312億円 | 301億円 | 261億円 | 1200万円 | 3.3% |
国内損保と海外保険がほぼ同規模。介護事業も持つ点が他社と違う。
株式会社第一ライフグループ非主戦場
| セグメント(事業別) | 売上高 | 資産 | 設備投資 | 減価償却 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内保険主戦場 | 8.16兆円 | 45.56兆円 | 1623億円 | 550億円 | 69.8% |
| 海外保険 | 3.52兆円 | 28.03兆円 | 40億円 | 378億円 | 30.2% |
生保最大手級(第一生命)。国内保険が主力で、海外保険も伸ばす。
株式会社T&Dホールディングス非主戦場
| セグメント(事業別) | 売上高 | 資産 | 設備投資 | 減価償却 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|
| T&D ユナイテッドキャピタル | 3億円 | 104億円 | — | 300万円 | 100.0% |
| Daido Life Insurance | — | — | 83億円 | — | — |
太陽生命・大同生命を傘下に持つ生保グループ。中小企業向けに強い。
世界の状況
日本の上場企業だけでは業界の全体像は見えない。世界の主要プレイヤーを並べると、 この業界で日本勢がどの位置にいるのかが分かる。棒の長さは規模(売上・総資産・台数など)の目安。
① 損保の最大リスクは「天災」—— 風水災の保険金支払い
損保の収支を最も大きく揺らすのは自然災害。2018 年の台風 21 号は、日本の風水災で過去最大の保険金支払いとなった。
| # | プレイヤー | 支払保険金 | 順位・規模 |
|---|---|---|---|
| 1 | 平成30年 台風21号(2018-09)日本 | 1兆678億円 | 風水災で過去最大・支払 857,284 件 |
| 2 | 令和元年 台風19号(2019-10) | 5,826億円 | 第2位(東日本台風) |
| 3 | 令和元年 台風15号(2019-09) | 4,656億円 | 第4位(房総半島台風) |
| 4 | 平成30年 7月豪雨(2018-07) | 1,956億円 | 第9位(西日本豪雨) |
業界の変遷(年表)
いまの勢力図がどう出来上がったのか。主要な出来事を時系列で並べる。各行の「出典」は発表元の一次資料へのリンク。
- 2001-10
三井海上と住友海上が合併し「三井住友海上火災保険」が発足した。
出典: 三井住友海上 公式「沿革・歴史」 - 2002
東京海上と日動火災が共同持株会社「ミレアホールディングス」を設立し上場(2004 年 10 月に東京海上日動火災保険が発足、2008 年 7 月に東京海上ホールディングスへ商号変更)。
出典: 東京海上 HD 公式「沿革」 - 2002-07
安田火災と日産火災が合併し「損害保険ジャパン」が発足(同年 12 月に大成火災と合併)。
出典: 損保ジャパン ディスクロージャー誌 2013「歴史・沿革」 - 2004-04
太陽生命・大同生命・T&D フィナンシャル生命を傘下に「T&D ホールディングス」を設立し上場した。
出典: T&D ホールディングス 公式「沿革」 - 2010-04
損保の再編が完了。損保ジャパンと日本興亜が「NKSJ ホールディングス」を設立し、三井住友海上・あいおい・ニッセイ同和が統合して「MS&AD インシュアランスグループ」が発足した。
出典: SOMPO HD 公式「沿革」/MS&AD 公式「沿革」 - 2010
第一生命が相互会社から株式会社へ組織変更し、東京証券取引所に上場した。
出典: 第一ライフグループ 公式「沿革」 - 2015-06
東京海上日動が米スペシャルティ保険の HCC インシュアランス・ホールディングスを総額約 75 億ドル(約 9,400 億円)で買収。海外保険が収益の柱になっていく転機となった。
出典: 東京海上 HD 買収説明資料(2015-06-10) - 2015
第一生命が米プロテクティブ・ライフを約 5,822 億円(約 57.08 億ドル)で完全子会社化し、海外生保へ本格進出した。
出典: 第一生命 ニュースリリース(2014-06-04) - 2016-10
損保ジャパン日本興亜ホールディングスが「SOMPO ホールディングス」へ商号変更した。
出典: SOMPO HD 公式「沿革」 - 2017-03
SOMPO が米エンデュランス・スペシャルティ・ホールディングスの全株式を取得し連結子会社化(取得価額 約 6,394 億円=同社グループで当時最大規模の買収)。
出典: SOMPO HD ニュースリリース(2016-10-05) - 2018-09
台風 21 号の保険金支払いが 1 兆 678 億円となり、日本の風水災で過去最大となった。同年は 7 月豪雨(1,956 億円)も重なり、損保各社の収支を直撃した。
出典: 日本損害保険協会「過去の主な風水災等による保険金の支払い」 - 2024-03
日本銀行がマイナス金利政策を解除。長年の超低金利は保険会社の資産運用を圧迫してきたため、金利上昇は追い風となる。
出典: 日本銀行 公表文(2024-03-19) - 2026-02
SOMPO が Sompo International を通じて英 Aspen Insurance Holdings の全株式を取得し連結子会社化した。海外M&Aの流れは続いている。
出典: SOMPO HD 公式「沿革」
よくある質問
保険業界の主な上場企業はどこですか?
保険業界の主な上場企業には、東京海上ホールディングス株式会社、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社、SOMPOホールディングス株式会社があります(日本国内の上場企業ベース)。
保険業界の世界の主要プレイヤーはどこですか?
① 損保の最大リスクは「天災」—— 風水災の保険金支払いによると、平成30年 台風21号(2018-09)(1兆678億円)、令和元年 台風19号(2019-10)(5,826億円)、令和元年 台風15号(2019-09)(4,656億円)、平成30年 7月豪雨(2018-07)(1,956億円)が挙げられます。