石油
縮む国内需要と統合の歴史 —— 精製マージンと原油価格で決まる商売
石油元売は、人口減・燃費改善・EV 化で国内のガソリン需要が構造的に縮小するなか、統合によって生き残ってきた。 業績は「原油価格 × 精製マージン × 在庫評価」でほぼ決まり、原油高では在庫評価益が出る一方、 原油急落では評価損が出るため、実力を見るには在庫影響を除いた利益で見る必要がある。 各社は水素・再エネ・化学品へ転換を模索している。下表は各社の全社連結。
各社の全社連結(横断比較)
セグメント別(主戦場/非主戦場)
各社の事業別セグメント売上・利益。この業界の主戦場に当たるセグメントには主戦場を付けています。主戦場が見当たらない会社は、その事業が独立セグメントとして開示されていない(=全社の一部に埋もれている)ことを意味します。
ENEOSホールディングス株式会社主戦場側
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 資産 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 石油・天然ガス開発 | 2167億円 | 508億円 | 1.29兆円 | 527億円 | 651億円 | 300万円 | 100.0% |
最大手。石油精製・販売に加え、金属(JX 金属)・石油開発も持つ。
世界の状況
日本の上場企業だけでは業界の全体像は見えない。世界の主要プレイヤーを並べると、 この業界で日本勢がどの位置にいるのかが分かる。棒の長さは規模(売上・総資産・台数など)の目安。
① 世界の石油メジャーと日本の元売
日本最大の ENEOS でも、エクソンモービルとは規模が大きく違う。石油は世界の巨大資本が支配する産業。
| # | プレイヤー | 売上(原文値) | 定義・決算期 |
|---|---|---|---|
| 1 | ExxonMobil(米) | $332,238M | 暦年2025・Total revenues and other income |
| 2 | Shell(英) | $266,886M | 暦年2025・Revenue |
| 3 | TotalEnergies(仏) | $201,196M | 暦年2025・Sales(契約収益) |
| 4 | BP(英) | $192,549M | 暦年2025・Sales and other operating revenues |
| 5 | Chevron(米) | $189,031M | 暦年2025・Total revenues and other income |
| 6 | ENEOS ホールディングス日本 | ¥11兆7,655億 | 2026年3月期(−4.5%) |
| 7 | 出光興産日本 | ¥8兆1,059億 | 2026年3月期(−11.8%) |
| 8 | コスモエネルギー HD日本 | ¥2兆6,776億 | 2026年3月期(−4.4%) |
② 国内の燃料油需要は縮み続ける
人口減・燃費改善・EV 化で、国内の石油需要は構造的に縮小する見通し。これが元売各社が統合と転換を進める理由。
| # | プレイヤー | 燃料油の国内需要(千kL) | 区分 |
|---|---|---|---|
| 1 | 2023年度(実績) | 142,023 千kL | 実績 |
| 2 | 2024年度(実績見込) | 136,543 千kL | 実績見込 |
| 3 | 2029年度(見通し)日本 | 122,202 千kL | 見通し |
業界の変遷(年表)
いまの勢力図がどう出来上がったのか。主要な出来事を時系列で並べる。各行の「出典」は発表元の一次資料へのリンク。
- 2000
国内の石油製品需要が減少に転じた(ENEOS の公式沿革の記述)。以後、業界は縮む市場のなかで統合を重ねることになる。
出典: ENEOS ホールディングス 公式「沿革」 - 2010
新日本石油と新日鉱グループの経営統合により「JX グループ」が発足した。
出典: ENEOS ホールディングス 公式「沿革」 - 2014
ENEOS が国内初の水素ステーションを開所。石油以外への転換の起点となった。
出典: ENEOS ホールディングス 公式「沿革」 - 2015-10
コスモエネルギーホールディングスが発足し、持株会社体制へ移行した。
出典: コスモエネルギー HD 公式「沿革」 - 2017-04
JX グループと東燃ゼネラルグループが経営統合し「JXTG グループ」が誕生(統合契約の締結は 2016 年 8 月)。国内元売の集約が進んだ。
出典: ENEOS ホールディングス 公式「沿革」 - 2019
出光興産と昭和シェル石油が経営統合し、出光興産として新たにスタートした。国内元売は実質3グループへ集約された。
出典: 出光興産 公式「沿革」 - 2019-11
JXTG ホールディングスが、社名を「ENEOS ホールディングス」、JXTG エネルギーを「ENEOS 株式会社」へ変更することを決定した(2020 年 6 月の定時株主総会日付で実施)。
出典: ENEOS 公式リリース(2019-11-28) - 2020
ENEOS が 2040 年カーボンニュートラルを表明。石油会社が「石油を減らす」目標を掲げる時代に入った。
出典: ENEOS ホールディングス 公式「沿革」 - 2021
ENEOS がジャパン・リニューアブル・エナジー(現・ENEOS リニューアブル・エナジー)の全株式取得を決定し、再生可能エネルギーへ本格参入した。
出典: ENEOS ホールディングス 公式「沿革」 - 2024
ENEOS が機能材事業・電気事業・再生可能エネルギー事業の分社化を実行。ポートフォリオの組み替えを進める。
出典: ENEOS ホールディングス 公式「沿革」 - 2025-01
コスモエネルギーが SAF(持続可能な航空燃料)の製造設備を完工。既存の製油所を脱炭素燃料へ振り向ける動きが具体化した。
出典: コスモエネルギー HD 公式「沿革」
よくある質問
石油業界の主な上場企業はどこですか?
石油業界の主な上場企業には、ENEOSホールディングス株式会社、出光興産株式会社、コスモエネルギーホールディングス株式会社があります(日本国内の上場企業ベース)。
石油業界の世界の主要プレイヤーはどこですか?
① 世界の石油メジャーと日本の元売によると、ExxonMobil(米)($332,238M)、Shell(英)($266,886M)、TotalEnergies(仏)($201,196M)、BP(英)($192,549M)、Chevron(米)($189,031M)が挙げられます。