パソコン(PC)
上場“専業”がほぼ存在しない業界 —— 総合電機の一事業として残るだけ
日本の PC 市場は規模で海外勢(レノボ・HP・Dell 等)に敗け、上場の PC 専業は実質ゼロ。 各社の戦略は「赤字回避=高付加価値ニッチ、または撤退」と「自社から切り離し=JV 化・分社・非上場化」に二分される。 下表は PC を手がける総合電機各社の“全社連結”決算で、PC 単独の数値ではない点に注意。
各社の全社連結(横断比較)
セグメント別(主戦場/非主戦場)
各社の事業別セグメント売上・利益。この業界の主戦場に当たるセグメントには主戦場を付けています。主戦場が見当たらない会社は、その事業が独立セグメントとして開示されていない(=全社の一部に埋もれている)ことを意味します。
富士通株式会社主戦場側
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| サービスソリューション | 2.31兆円 | 3615億円 | 172億円 | 707億円 | 321億円 | 66.6% |
| ハードウェアソリューション | 9333億円 | 670億円 | 200億円 | 185億円 | 765億円 | 26.8% |
| ユビキタスソリューション(PC・クライアント等)主戦場 | 2295億円 | 388億円 | 8500万円 | 1億円 | 3億円 | 6.6% |
富士通の PC/クライアント端末はユビキタスソリューションに含まれる。ただし PC 本体の主力は レノボとの合弁「富士通クライアントコンピューティング」が担い、そこは連結対象外。
パナソニックホールディングス株式会社非主戦場
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| パナソニック コネクト(法人向け・モバイル PC 等)主戦場 | 1.32兆円 | 1001億円 | 180億円 | 819億円 | 597億円 | 19.3% |
| くらしアプライアンス/スマートライフ | 1.25兆円 | -373億円 | 314億円 | 515億円 | 1240億円 | 18.2% |
| 空調・コールドチェーン | 1.15兆円 | 231億円 | 331億円 | 431億円 | 1628億円 | 16.8% |
| インダストリー | 1.12兆円 | 405億円 | 587億円 | 618億円 | 498億円 | 16.3% |
| エレクトリックワークス | 1.08兆円 | 577億円 | 287億円 | 364億円 | 800億円 | 15.8% |
| エナジー | 9410億円 | 698億円 | 4316億円 | 473億円 | 433億円 | 13.7% |
法人向けモバイル PC(レッツノート/タフブック)は「パナソニック コネクト」が担う。 同セグメントは PC 以外の B2B 事業も含み、PC 単独の内訳ではない。
日本電気株式会社非主戦場
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| IT サービス | 2.51兆円 | 3367億円 | 225億円 | 777億円 | 20億円 | 100.0% |
NEC の家庭向け PC(NEC パーソナルコンピュータ)はレノボとの合弁で連結対象外のため、 セグメントに PC 単独は現れない。開示は IT サービス等が中心。
シャープ株式会社非主戦場
シャープは旧東芝 PC 事業(Dynabook)を傘下に持つが、当該期の収録データにはセグメント別の売上・利益が未収載。
セイコーエプソン株式会社非主戦場
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 資産 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| プリンティングソリューション | 1.03兆円 | 1206億円 | 7952億円 | 479億円 | 488億円 | 5300万円 | 73.1% |
| 製造関連・ウェアラブル | 1969億円 | 108億円 | 2016億円 | 96億円 | 111億円 | 92億円 | 14.0% |
| ビジュアルコミュニケーション | 1814億円 | 123億円 | 1530億円 | 71億円 | 96億円 | 0円 | 12.9% |
エプソンの主力はプリンティング等で、PC(Endeavor)はごく小規模。独立した PC セグメントの開示はない。
世界の状況
日本の上場企業だけでは業界の全体像は見えない。世界の主要プレイヤーを並べると、 この業界で日本勢がどの位置にいるのかが分かる。棒の長さは規模(売上・総資産・台数など)の目安。
世界の PC 出荷台数ランキング(CY2024)
IDC 調べ・CY2024 通年。「伝統的 PC(デスクトップ+ノート+ワークステーション、タブレット/サーバ除く)」の出荷台数ベース。
| # | プレイヤー | 出荷台数(CY2024) | シェア/前年比 |
|---|---|---|---|
| 1 | Lenovo | 6,180万台 | 23.5%/+4.7% |
| 2 | HP Inc. | 5,300万台 | 20.2%/+0.1% |
| 3 | Dell Technologies | 3,910万台 | 14.9%/-2.2% |
| 4 | Apple | 2,290万台 | 8.7%/+4.5% |
| 5 | ASUS | 1,790万台 | 6.8%/+6.4% |
| 6 | その他 | 6,800万台 | 25.9%/-2.1% |
| 7 | 世界計 | 2億6,270万台 | 100%/— |
業界の変遷(年表)
いまの勢力図がどう出来上がったのか。主要な出来事を時系列で並べる。各行の「出典」は発表元の一次資料へのリンク。
- 2005-05
IBM が PC 事業を Lenovo へ売却完了。世界 3 位の PC メーカーが誕生した。
出典: Lenovo 公式リリース(2005-05-01) - 2011-07
NEC が PC 事業を分社し、Lenovo との合弁 Lenovo NEC Holdings を設立(当初 NEC 49% 出資)。
出典: NEC Form 20-F(SEC, 2020) - 2011
世界の PC 出荷はこの年がピーク。2012 年以降は毎年減少に転じた。
出典: Gartner 公式リリース(2017-01-11) - 2014-07
ソニーが VAIO の PC 事業を投資ファンド JIP へ売却し、PC 市場から撤退した(ソニーは 5% 出資)。
出典: ソニー・JIP 共同発表(Sony Form 6-K, SEC, 2014-02-06) - 2016-07
NEC が合弁株の 90% を Lenovo へ売却。NEC の保有は議決権 33.4%・経済的持分 4.9% まで縮小した。
出典: NEC Form 20-F(SEC, 2020) - 2017-11
富士通が PC 子会社 FCCL を Lenovo 51%・DBJ 5% へ売却し合弁化した(富士通は 44% 残存)。
出典: 富士通 公式リリース(2017-11-02) - 2018-10
東芝が PC 子会社(dynabook)の株式 80.1% をシャープへ譲渡した。
出典: 東芝 公式リリース(2020-08-04) - 2020-08
東芝が残り 19.9% も譲渡し、dynabook がシャープの完全子会社に。東芝は PC 事業から完全撤退した。
出典: 東芝 公式リリース(2020-08-04) - 2020
コロナ特需で世界 PC 出荷は 2 億 7,500 万台・前年比 +4.8%(過去 10 年で最高の成長率)。
出典: Gartner 公式リリース(2021-01-11) - 2021
コロナ特需のピーク。世界 PC 出荷は 3 億 3,980 万台・前年比 +9.9%(2013 年以来の最大出荷)。
出典: Gartner 公式リリース(2022-01-12) - 2024
直近 CY2024 の世界 PC 出荷は 2 億 6,270 万台・前年比 +1%(平常化)。
出典: IDC 公式リリース prUS53061925(2025-01-09)
よくある質問
パソコン(PC)業界の主な上場企業はどこですか?
パソコン(PC)業界の主な上場企業には、富士通株式会社があります(日本国内の上場企業ベース)。
パソコン(PC)業界の世界の主要プレイヤーはどこですか?
世界の PC 出荷台数ランキング(CY2024)によると、Lenovo(6,180万台)、HP Inc.(5,300万台)、Dell Technologies(3,910万台)、Apple(2,290万台)、ASUS(1,790万台)が挙げられます。