半導体
PC とは対照的 —— 日本は“上流”(製造装置・材料)で世界の主戦場を握る
半導体の価値連鎖は「設計 → 製造装置 → 材料 → 製造(ファウンドリ)→ メモリ/ロジック」に分かれる。 日本勢は製造装置と材料で世界トップシェアを握る一方、先端ロジックやファウンドリ、メモリの最前線では 海外勢(TSMC・サムスン・インテル・エヌビディア等)に主役を譲った。下表は日本の上場勢を 「半導体が主力(装置・材料・デバイス専業)」と「半導体を一事業に持つ総合勢」に分けて並べる。 数値は各社の“全社連結”で半導体単独ではない点に注意(ただし専業各社はほぼ全社が半導体)。
各社の全社連結(横断比較)
セグメント別(主戦場/非主戦場)
各社の事業別セグメント売上・利益。この業界の主戦場に当たるセグメントには主戦場を付けています。主戦場が見当たらない会社は、その事業が独立セグメントとして開示されていない(=全社の一部に埋もれている)ことを意味します。
東京エレクトロン株式会社主戦場側
コータ/デベロッパ、エッチング装置、成膜装置など前工程の主要装置を手がける世界大手。 単一セグメント開示のため事業別内訳は出ない=全社が半導体製造装置。
キオクシアホールディングス株式会社主戦場側
NAND 型フラッシュメモリの世界大手(旧・東芝メモリ)。2024 年 12 月に東証へ新規上場。 単一セグメント開示=全社がメモリ。
ルネサスエレクトロニクス株式会社主戦場側
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 減価償却 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|
| 産業・インフラ・IoT主戦場 | 6718億円 | 1694億円 | 335億円 | 51.2% |
| 自動車(車載)主戦場 | 6397億円 | 1966億円 | 436億円 | 48.8% |
車載(オートモーティブ)と産業・インフラ・IoT 向けの MCU/アナログ半導体で世界大手。 12 月決算のため表は 2025 年 12 月期の全社連結。当期はのれん等の減損で最終赤字。
株式会社アドバンテスト主戦場側
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 半導体テスタ(テストシステム)主戦場 | 1.02兆円 | 5188億円 | — | 192億円 | 1000万円 | 90.3% |
| サービス・サポート他 | 1092億円 | 88億円 | 65億円 | 56億円 | — | 9.7% |
半導体を検査するテスタ(テストシステム)で世界首位級。AI 向け SoC/HBM 需要で伸長。 テストシステム事業が売上の大半を占める。
株式会社SCREENホールディングス主戦場側
ウェハ洗浄装置(枚葉式)で世界首位級。当該期の収録データにはセグメント別売上・利益が未収載。
ローム株式会社主戦場側
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 資産 | 設備投資 | 減価償却 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 集積回路(IC)主戦場 | 2184億円 | 245億円 | 1694億円 | 84億円 | 196億円 | 48.0% |
| ディスクリート半導体(パワー等)主戦場 | 2053億円 | -227億円 | 2252億円 | 691億円 | 333億円 | 45.1% |
| モジュール主戦場 | 316億円 | 35億円 | 137億円 | 8億円 | 18億円 | 6.9% |
パワー半導体(SiC 含む)を中心にディスクリート・IC・モジュールを手がける半導体専業。 全セグメントが半導体。SiC 投資先行で当期のディスクリートは営業赤字。
株式会社SUMCO主戦場側
半導体の土台となるシリコンウェハの世界大手(信越化学と二強)。ウェハ専業のため全社が半導体材料。 12 月決算・単一セグメント。ウェハ市況の調整で当期は営業利益が大きく縮小。
レーザーテック株式会社主戦場側
EUV(極端紫外線)フォトマスクの欠陥検査装置で独占的な地位を持つ。単一セグメント開示。 6 月決算のため、表の数値は 2025 年 6 月期の全社連結。
株式会社ソシオネクスト主戦場側
自社工場を持たないファブレスで、顧客向けカスタム SoC を設計する。製造は外部ファウンドリに委託。 単一セグメント開示。
ソニーグループ株式会社非主戦場
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Game And Network Services | 4.57兆円 | 4633億円 | — | 1475億円 | 1156億円 | 36.9% |
| Entertainment Technology And Services | 2.18兆円 | 1586億円 | — | 1031億円 | 757億円 | 17.6% |
| Music | 2.09兆円 | 4470億円 | 1954億円 | 1309億円 | 296億円 | 16.9% |
| イメージング&センシング(CMOSイメージセンサ)主戦場 | 2.06兆円 | 3573億円 | — | 2651億円 | 925億円 | 16.6% |
| Pictures | 1.49兆円 | 1049億円 | 444億円 | 5178億円 | 130億円 | 12.0% |
CMOS イメージセンサで世界首位。ただしゲーム・音楽・映画・金融等を含む総合企業で、 半導体(I&SS)は複数事業の一つ。
三菱電機株式会社非主戦場
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Life | 2.29兆円 | 1706億円 | 672億円 | 894億円 | 317億円 | 39.9% |
| Industry And Mobility | 1.65兆円 | 1311億円 | 400億円 | 632億円 | 190億円 | 28.8% |
| Infrastructure | 1.45兆円 | 1547億円 | 608億円 | 344億円 | 120億円 | 25.3% |
| 半導体・デバイス主戦場 | 2589億円 | 475億円 | 1051億円 | 256億円 | 282億円 | 4.5% |
| Digital Innovation | 853億円 | 120億円 | 50億円 | 78億円 | 728億円 | 1.5% |
パワー半導体の大手。ただし全社は FA・空調・重電インフラ等を含む総合電機で、 半導体・デバイスはその一事業。
信越化学工業株式会社非主戦場
半導体シリコン(ウェハ)で世界首位。ただし全社は塩ビ・シリコーン等を含む総合化学で、 半導体材料はその一部門。当該期の収録データにはセグメント別売上・利益が未収載。
京セラ株式会社非主戦場
| セグメント(事業別) | 売上高 | 営業利益 | 資産 | 設備投資 | 減価償却 | セグメント間取引 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ソリューション | 1.04兆円 | 1039億円 | 1.20兆円 | 240億円 | 544億円 | 265億円 | 50.7% |
| コアコンポーネント | 6526億円 | 631億円 | 7643億円 | 788億円 | 477億円 | 8億円 | 31.7% |
| 電子部品 | 3626億円 | 73億円 | 6998億円 | 269億円 | 335億円 | 8億円 | 17.6% |
半導体パッケージ・電子部品を手がけるが、全社はファインセラミック・機器・通信等を含む総合部品。 半導体は単独セグメントとしては開示されない。
イビデン株式会社非主戦場
半導体パッケージ基板(FC-BGA)で世界トップ級。ただし全社はプリント配線板・セラミック等を含み、 当該期の収録データにはセグメント別売上・利益が未収載。
世界の状況
日本の上場企業だけでは業界の全体像は見えない。世界の主要プレイヤーを並べると、 この業界で日本勢がどの位置にいるのかが分かる。棒の長さは規模(売上・総資産・台数など)の目安。
① 半導体製造装置メーカー 世界売上(上流=日本の主戦場)
前工程の主要装置を手がける世界大手5社。日本は東京エレクトロン1社が上位に食い込む。 露光(EUV)は ASML の独占領域で日本勢は不在。
| # | プレイヤー | 全社売上(直近通期) | 決算期・補足 |
|---|---|---|---|
| 1 | ASML(蘭) | €28.3 B | 2024/12期 |
| 2 | Applied Materials(米) | $27.18 B | 2024/10期(半導体部門 $19.9B) |
| 3 | 東京エレクトロン日本 | ¥2兆4,316億 | 2025/3期 |
| 4 | Lam Research(米) | $14.9 B | 2024/6期 |
| 5 | KLA(米) | $9.81 B | 2024/6期 |
② ファウンドリ(受託製造)世界シェア(下流=日本は不在)
設計された半導体を受託製造する専業ファウンドリ。先端ロジックは台湾 TSMC がほぼ独占し、 上位に日本企業は入らない(ラピダスは量産前)。
| # | プレイヤー | 世界シェア(4Q24) | 四半期売上 |
|---|---|---|---|
| 1 | TSMC(台) | 67% | $26.85 B |
| 2 | Samsung Foundry(韓) | 8.1% | $3.26 B |
| 3 | SMIC(中) | 5.5% | $2.2 B |
| 4 | UMC(台) | — | $1.87 B |
| 5 | GlobalFoundries(米) | — | $1.83 B |
③ NAND 型フラッシュメモリ 世界シェア(下流=日本はキオクシアのみ)
メモリのうち NAND では、日本のキオクシアが世界3位で唯一の一角を占める。 もう一方の DRAM は韓国2社+米マイクロンで約98%を占め、日本勢はいない。
| # | プレイヤー | 世界シェア(4Q24) | 四半期売上 |
|---|---|---|---|
| 1 | Samsung(韓) | 33.9% | $5.6 B |
| 2 | SK Group(SK hynix+Solidigm)(韓) | 20.5% | $3.39 B |
| 3 | キオクシア(日)日本 | 16.1% | $2.66 B |
| 4 | Micron(米) | 13.8% | $2.28 B |
| 5 | Western Digital/SanDisk(米) | 11.4% | $1.88 B |
業界の変遷(年表)
いまの勢力図がどう出来上がったのか。主要な出来事を時系列で並べる。各行の「出典」は発表元の一次資料へのリンク。
- 1980年代後半
日本が世界の半導体シェアで首位に立った時期。DRAM を中心に日本メーカーが市場を席巻した (具体的なシェア%は読める一次原文を確認できなかったため、本ページでは数値を伏せる)。
- 1999-12
NEC と日立製作所が DRAM 事業を統合し「NEC 日立メモリ」を設立(後のエルピーダメモリ)。
出典: 日立製作所 ニュースリリース(1999-12-27) - 2003
日立製作所と三菱電機が半導体(システム LSI)事業を統合し「ルネサス テクノロジ」を設立(日立55%・三菱45%)。
出典: 日立製作所 ニュースリリース(2002-10-03) - 2010-04
NEC エレクトロニクスとルネサステクノロジが合併し、ルネサスエレクトロニクス(東証 6723)が発足。
出典: Renesas 公式ニュースルーム(2010-04-01) - 2012-02
エルピーダメモリが会社更生手続の開始を東京地裁に申請(日本の DRAM 専業の経営破綻)。
出典: Micron Form 10-K(SEC, FY2013) - 2013-07
米マイクロンがエルピーダの全株式を 6.15 億ドルで取得し買収を完了。日本の DRAM は海外勢の手に。
出典: Micron Form 10-K(SEC, FY2013) - 2017-01
東芝がメモリ事業の分社化方針を決定(後の東芝メモリ → キオクシア)。
出典: 東芝 開示(2017-01-27) - 2018-06
東芝がメモリ子会社を Bain Capital 主導の連合(K.K. Pangea)へ売却完了。東芝は約40.2%を再出資。
出典: 東芝 開示(2018-06-01) - 2022-08
先端ロジック(2nm)の国産化を目指すラピダスを設立。日本のファウンドリ再挑戦。
出典: Rapidus 公式(会社概要) - 2024-02
TSMC の子会社 JASM が熊本第1工場を開所(量産開始は 2024 年末を予定)。
出典: TSMC 公式プレスリリース(2024-02-24) - 2024-12
キオクシアホールディングスが東証プライム市場へ新規上場(証券コード 285A)。
出典: キオクシア 公式(上場承認, 2024-11-22)
よくある質問
半導体業界の主な上場企業はどこですか?
半導体業界の主な上場企業には、東京エレクトロン株式会社、キオクシアホールディングス株式会社、ルネサスエレクトロニクス株式会社、株式会社アドバンテスト、株式会社SCREENホールディングス、ローム株式会社、株式会社ディスコ、株式会社SUMCO、レーザーテック株式会社、株式会社ソシオネクスト、株式会社東京精密があります(日本国内の上場企業ベース)。
半導体業界の世界の主要プレイヤーはどこですか?
① 半導体製造装置メーカー 世界売上(上流=日本の主戦場)によると、ASML(蘭)(€28.3 B)、Applied Materials(米)($27.18 B)、東京エレクトロン(¥2兆4,316億)、Lam Research(米)($14.9 B)、KLA(米)($9.81 B)が挙げられます。